インダクタは、磁界にエネルギーを蓄える受動部品です。回路上の基本的な性質は、端子間電圧と電流の変化速度の関係にあります。この性質を利用して、電流リップルを抑えたり、スイッチング電源でエネルギーを受け渡したり、RF回路の周波数特性を調整したりします。
部品名はインダクタ、その特性を表す物理量がインダクタンスLで、単位はヘンリー(H)です。10 µHという数値だけでは、使用できる部品かどうかは判断できません。
インダクタに電圧を加えるとどうなるか
Lが一定の理想的な線形インダクタでは、電流が電圧の正端子へ流入する向きに定義すると、次の関係が成り立ちます。
v_L = L × di/dt
ΔI = V_L × Δt / L
E_L = ½ × L × I²
v_Lは理想インダクタンスにかかる電圧です。実部品の巻線抵抗による電圧降下は別に扱います。このモデルでは、有限の電圧で電流を瞬時に変化させることはできません。実回路で電流経路を急に遮断すると、過渡的な高電圧が生じることがあります。基礎式はOpenStax 14.2節と14.3節で確認できます。
以下は計算例であり、実測値ではありません。 Lが10 µHで一定、理想インダクタンスにかかる電圧が1 Vで、印加時間を10 µsとすると、電流は1 A増加します。また、これとは別に2 Aの動作点を考えると、蓄積エネルギーは20 µJです。実部品が飽和せずに使用できることや温度上昇まで示す計算ではありません。直流重畳によってLが大きく変わる場合は、一定Lの式だけでなく、適切な磁気モデルが必要です。
用途と構造の分類を混同しない
「パワーインダクタ」「RFインダクタ」は主な用途を表します。電源用途では電流波形、直流重畳特性、損失などが重要です。RF用途では、信号周波数におけるL、Q、インピーダンスも確認します。一方、空芯、フェライトコア、巻線、積層といった名称は構造の違いであり、性能の優劣を一律に表すものではありません。
磁気シールドや外形寸法も選定条件ですが、シールド品を選ぶだけですべての結合や配置の問題が解消するわけではありません。Coilcraftの選定解説では、必要なLの計算と実部品の選定を分けて説明しています。
データシートで併せて読む項目
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| インダクタンスと許容差 | 測定周波数、信号レベル、直流重畳、温度。必要なL-I特性があるか。 |
| 飽和電流Isat | Lが何%低下した点で定義されるか。必要なピーク電流での特性。 |
| 温度上昇に基づく電流定格(Irmsなど) | 許容温度上昇、周囲温度、基板、測定方法。実波形による損失も含めて評価する。 |
| 直流抵抗DCR | 代表値と最大値の違い、基準温度。 |
| 自己共振周波数SRFとQ | 使用する周波数範囲でのインピーダンスと損失。 |
| 機械的仕様 | 外形、高さ、ランド、実装方法、周辺回路との関係。 |
Isatと温度上昇に基づく定格は異なる指標です。CoilcraftのIrmsは、所定の条件で規定の温度上昇を生じさせる直流電流から定義されます。スイッチング波形では、その試験が含まない損失が加わる場合があります。電流・温度定格の説明で条件を確認してください。
例えば実効電流2 A、巻線抵抗0.05 Ωなら、I_RMS² × DCRによる抵抗損失の概算は0.20 Wです。ただし抵抗値が動作条件に対応している必要があり、追加の交流巻線損失やコア損失は含みません。この値だけでは部品温度は求まりません。
再現できる確認手順
- 回路の周波数、電流波形、ピーク・実効電流、周囲温度、実装制約を記録する。
- サフィックスまで含む正確な品番について、測定条件と直流重畳特性を確認する。
- 納入品の値を照合するときはデータシートの測定条件を再現する。使用周波数・重畳電流での評価は別途行う。
- 測定器、治具、補正、信号レベル、温度を残す。微小信号のLCR測定だけで大電流動作を保証しない。
- 実装回路で波形、損失、温度を確認し、結果を部品の版や条件と対応づける。
周波数や治具の違いで測定値が変わる理由は、Coilcraftの使用周波数での測定解説が参考になります。特に自己共振付近では、理想インダクタの式だけで扱うのは不十分です。
次の確認にはインダクタ電流チェック、データシート一覧、インダクタとコンデンサの比較を利用できます。
参考資料と更新内容
本文中の教科書リンクは理想モデルの根拠、メーカー資料は定格と測定条件の確認先です。数値例は独自に計算した説明用のもので、特定部品の試験結果ではありません。
2026-10-24更新: 裏付けのない個人の経歴や製造時の体験談を削除し、出典、計算条件、確認手順を明示しました。AI支援で作成しており、技術者や母語話者による独立した査読を受けたとは表明していません。元の公開日とURLは編集記録に保持します。


