Würth Elektronikの744725は、設計評価用キットの注文番号です。単一のチョークや、共通の電気仕様を持つ一つの製品を指す番号ではありません。キットで候補を比較し、採用時には部品の完全な注文番号と対応するデータシートを確認します。USBやCAN向けというキットの紹介だけで、すべての収録品が各インターフェースの全仕様に対応するとは判断できません。
キットから実際の部品を特定する
メーカーの744725キットページには、複数のコモンモードチョーク製品群が掲載されています。評価前に、届いたキットの構成と試料の表示を確認してください。試料の結果を部品表へ引き継ぐには、注文可能な品番との対応が必要です。
従来の製品群を混在させた一覧に代え、本稿ではWE-SL5の注文番号744272121を一つの例として扱います。異なる製品群、版、巻線構成の数値を組み合わせても、代替品の仕様にはなりません。
数値と測定条件を一緒に読む
出典は744272121データシート、Rev. 007.000、2026-02-06、1ページです。別記がない電気特性の試験条件は+20°C、相対湿度33%です。
| 項目 | データシートの値 | 条件と読み方 |
|---|---|---|
| インダクタンスL | 120 µH、±40% | 100 kHz / 100 mV |
| 最大インピーダンスZmax | 450 Ω、代表値 | 10 MHz。帯域全体の保証下限ではありません |
| 100 MHzでのインピーダンス | 400 Ω、代表値 | 周波数を限定した値 |
| 定格電流IR | 3000 mA、max. | ΔT = 40 K。Isatの表示ではありません |
| 直流抵抗RDC | 0.025 Ω、max. | 高周波インピーダンスとは区別します |
旧一覧の460 Ωと2500 mAは、この版の値と一致しません。対応する日付入りメーカー資料がなければ、そのまま転記しないでください。また、巻線が二つあることだけを理由に、表のインダクタンスを実回路で単純に2倍することもできません。
ノイズだけでなく差動信号への影響を調べる
同じPDFの2ページには、コモンモードとディファレンシャルモードの特性があります。不要なノイズと通したい信号では要求が異なるため、両方を確認します。Coilcraftの高速データインターフェース向け選定解説も、まず差動信号の減衰を確認する考え方を説明しています。
実際のインターフェース、信号条件、終端、ノイズ周波数、許容する信号劣化を記録します。該当帯域の曲線や利用可能なSパラメータを比較し、最後は実装した伝送路で確認します。公称インダクタンスやZmaxだけから、特定のケーブル、コネクタ、基板での挿入損失は決まりません。代表特性を、そのまま適合試験の合格保証とすることもできません。
二つの巻線の抵抗損失を数える
以下は実測ではなく、単純化した計算例です。各線に1 Aの直流が流れ、評価する基準条件で各巻線の抵抗を0.025 Ωと仮定します。往路と復路を合わせると、
R_loop = R_1 + R_2 = 0.025 + 0.025 = 0.050 Ω
V_drop = I × R_loop = 1 × 0.050 = 0.050 V
P_R,total = I² × (R_1 + R_2) = 1² × 0.050 = 0.050 W
等しい電流が逆向きに流れても、巻線抵抗による損失は消えません。この式には抵抗の温度変化、追加の交流損失、磁心損失が含まれていません。温度上昇の予測や、実基板での許容電流の確認には使えません。実際の電流で再計算し、メーカーの熱条件も別途評価します。
再現できる試料比較にする
- 完全な注文番号、データシートの版、巻線の接続、実装パターンを記録します。
- 信号品質とノイズの判定条件を先に定め、フィルタなしの結果を保存します。
- 基板、ケーブル、終端、測定器をそろえ、変更点を残します。
- 想定する動作条件で、信号、EMI、電圧降下、部品温度を確認します。
- 電気・熱・機械の条件を合わせて採否を決め、未解決事項は担当技術者に確認します。
データシート一覧は資料検索に、インダクタの基礎解説は用語の確認に利用できます。コモンモードチョークとエネルギー蓄積用インダクタが、そのまま交換できるわけではありません。
参考資料と改訂内容
キットページは構成の位置付け、品番別PDFは表の値と曲線、アプリケーションノートは信号とノイズから選定する方法の根拠です。特定のインターフェースや機器試験に合格することを示す資料ではありません。
2026-10-26改訂:キット番号を明確にし、未検証の混在一覧を削除。版と条件を伴う数値と、二つの巻線の損失計算を追加しました。AIによる編集確認であり、独立した母語話者の技術審査やハードウェア試験は行っていません。元のURLと公開日は編集記録に保持しています。

